何か、違う思い

「じゃあ行ってくるよ」と行ってしまった。
社会人になって5年も一人暮らしをしていて、年に2日くらいしか帰ってこない。
とっくに親離れ、子離れをしていたのに、妙に寂しい。

「会社辞めたよ。2年間オーストラリアへ行くよ。できたら向こうで就職して永住したい」
大企業の今の厚遇を蹴って新しい道を切り開いていく息子を大いに、心から応援した。
今の日本を会社というよりどころなしに単身で出ることは 計り知れないプラスになる。
口で言うほどたやすくないことは本人が一番わかっている。


「送っていこうか」
「時間がたっぷりあるから大丈夫だよ」
「じゃあ」
20kgもあるバックパックとリュックを手に持って振り向きもせず去っていった。

その大きな荷物が頼もしくもあり、淋しくもあった。
5年前、1年間ニュージーランドへ行った時も、一人暮らしを始めた時もまったく感じなかった親としての思いがこみ上げてきた。
大きな荷物が親との決別を決意しているようで 辛くなってきた。
自分が歳をとったせいもあるのかな。

あの後姿の写真を撮らなかったことを今 後悔してやまない。
家の前のブロックベイを歩く姿を思い出してあわててスケッチした。
また、あらためて描くことにしよう。

健太


今ごろ、Brisbane