アッ! ヨタハチ
6号線でトヨタS800が隣に並んだ。
こんなにじっくり見たのは何年ぶりだろう。
写メを撮りそこなってしまったが、いつみてもこの車の奇を衒わない曲面は素晴らしい。
あんなに小さいのに今の日本車にはない存在感がある。
空力を取り入れたはじめての車。
この車のデザイナーは日本のcarデザイナーの草分け 佐藤章三先生。
私の大学の恩師でした。
当時からもうすでにお年を召していて(70歳は超えていたか?)、学校の資料作りも「目が見えにくいんで嫁に手伝ってもらって」とよく話していらっしゃった。
授業の内容は学生には難しく、今でも当時のプリントを読んでいるくらい。
この車は真意は定かでないが、先生が上司と車作りのことで喧嘩し、会社を1週間休んで、自宅のこたつで図面を書き上げ、完成したといういわく付きのもの。
設計の失敗は帽子をかぶって窓をあけて運転したとき、にある速度に達すると風が巻き込み帽子が飛んでしまうことだとお話されていた。
彫刻科の学生のデッサンを見て「彼らは対象物と一体化している」とよく言っておられた。
あるときクロッキー帳にサントリーオールド(ダルマ)をおもむろに描き出した。
外形線を描いただけなんだけど、その速度が遅く、おまけに左右対称じゃなく、よたったラインでみんな その下手な(?)スケッチに唖然としていた。
そしたら全員をゆっくり見回して
「誰かこれよりうまく描ける人?」・・・・・と。
ウーン全員があれよりうまく書けると思うけど、何なんだろうかと圧されてしまった。
どこが いいんだろうか・・・・・?
ただ元ソニーのチーフデザイナーは、「佐藤章三氏のスケッチをみれば正確に図面が書ける」と言っていた。
あのスケッチを理解できない自分たちが悪かった。
デザイナーのごまかしのテクニック・・・・、
マーカースケッチの自分勝手なデフォルメンションと高価なイラストボードを使ったスケッチは心の底から嫌っていた。
鉛筆を使え、それもごまかしのきかない硬い鉛筆を・・・、といつも言われていた。
形を表現したスケッチではなく、スケッチそのものに必要以上の価値を与えることを嫌っていた。
その想いとは裏腹にデザイナーのスケッチや形状は時代と共にどんどんチープで練りこみの無い物になっていっている。
耳の痛い話で、歳を増すごとに痛くなって中耳炎になりそうだ。